くたびれた星

  仲良くなり始めの夏の終わり、誕生日の話になった。その人の誕生日を聞くとわたしと日が近かったから、それを伝えるとおめでとうって言い合おうと喜んでくれた。

  翌日にその人がとある海外キャラクターが大好きだと言っているのを聞いて、わたしもそのキャラクターのことが好きだと返したら、じゃあお互いの誕生日の日が近づいたらプレゼントし合おうと少し盛り上がった。

 

  秋頃にふとその人の車の鍵のキーホルダーをみてみたら、そのキャラクターが星を持っているものだった。可愛らしいなと思って手に持って眺めてみると、長年つけ続けているからなのか、それは随分へたってくすんでいた。

  何日か経って帰り道に久しぶりに駅の近くの雑貨屋に寄ると、隅っこのほうにそれとおんなじものが売っていて、他にもそのキャラクターがハートを持っていたりクローバーを持っていたりするものがぶら下がっていた。

  何を持っているものをあげるのがいいのかなあ、と雑貨屋の前を通るたびに考えあぐねていたら、いつのまにか冬になった。

  寒さが増すに比例してその人はわたしから距離を置くようになった。きっとわたしのせいなんだろうと思った。ジェットコースターのような情緒が急降下してる時に限って連絡してしまっていたのがいけなかったんだろうと思った。

  でも誕生日には元どおり仲良くできるかもしれないと淡い希望を抱いていた。結局おめでとうという一言さえなかった‬。

 

  壊れてしまったらもう元に戻れない。壊したのはわたしだからもうどうしようもないんだけれど、‪今はまだその雑貨屋の前を通るたびに思い出してしまう。でもきっと、わたしはそのうち忘れてしまう。

 

   鍵にぶら下がったキャラクターがそっと持っていた星はくたびれていて、それはいつも疲れた顔をしながらも何か掴みたそうにもがいているその人自身のようだった。